マーケ部門・新垣です。こんにちは。
今回はメイド喫茶の後編です。
【前回のまとめ】
・日本橋でんでんタウンにあるメイド喫茶に行く。
(ツインテールの髪型のメイドさんに
怪獣ツインテールのフィギュアを手渡すため)
・「帰国したばかりのビジネスマンがメイド喫茶と知らずにやって来た」
という芝居を打つ(メイドさんと話し込む必要があったから)。
・チキンオムライスとアイスコーヒーを待つあいだに衝撃の事実が発覚。
(ツインテールのメイドさんが一人もいない)
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ツインテールのメイドさんなどいなかった。
「怪獣ツインテールのフィギュアを手渡す」
というミッションは、ここであえなくfailed.
実現しても継続的な社会貢献に繋がらないので別にいいけど。
嘆息し、あらためて店内を観察してみる。
ざっと見た感じ、座席数は30から40ほど。
午後3時10分現在、客は自分だけだった。
「お待たせしました、ご主人さま!」
黒髪のメイドがオムライスを運んできた。
彼女曰く、ケチャップで字を書いてくれるという。
もしも「アーノルド・シュワルツェネッガー」とか
「武者小路実篤」と命じたらどうするつもりなのか。
しばし黙考。そして脳内で
「メイド → 給仕 → 球児 → ドカベン」
と連想ゲームが展開され、
「ほんならドカベンで」と言いかける。
が、さらにもう一歩進めて「フォアマン」にした。
野球マンガ『ドカベン』の中盤あたりで
主人公が所属する私立明訓高校の強敵として
クリーンハイスクールという高校が登場する。
そのライバル校にハリー・フォアマンという
老け顔の留学生がいた。彼を思い出したのだ。
大さん「じゃあ、フォアマンで」
メイド「ふぉあまん、ですか?」
大さん「海外での僕のあだ名です。カタカナで書いてネ」
幸いにもメイドは『ドカベン』マニアではなかった様子。
ニセビジネスマンの虚言を信じてくれたようだった。
慎重な手つきでケチャップの容器をあやつるメイド。
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10秒経過
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20秒経過
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30秒経過
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完成
外国人球児の名前入りオムライスを食べてみる。
見た目以外は何の変哲もないオムライスだった。
まぁ山田太郎の巨大弁当よりはイケてるだろう。
よしとしようか。
突然、心臓のあたりがブルブルと震えた。
「うわ、メイド喫茶で心臓発作!?」
一瞬、冥土(めいど)行きを覚悟した。
が、震源は胸ポケットのケータイだった。
画面には、お世話になっている人材派遣会社A氏の名前。
A氏「新垣さん、お疲れさまです。今日は面接でしたよね?
どちらにいらっしゃいますか?」
「メイド喫茶で経歴詐称の男を演じている」とは言えないので
「休憩中です。面接は、まあまあでした」とショートコメント。
現実に引き戻され、アイスコーヒーを一気に飲み干す。
お愛想してもらおうと卓上のベルをチリ~ン♪と鳴らした。
精算はメイドが客のテーブルで行うシステムだ。
お金を乗せる銀のトレイを手に近づいてきたのは
身長140センチほどのメイド。中学生にしか見えない。
まだ新人のようで「ごすじんしゃま」と噛んでいた。
それはともかく、精算を済ませて席を立つ。
来店してちょうど1時間が経過していた。
ミッションは消化不良になってしまったが
チキンオムライスは消化しつつある。
一時的にせよ「ご主人さま」扱いされたので来てよかった。
「お気をつけて行ってらっしゃいませ、ご主人さま!」
メイドに見送られながら『カフェドール』をあとにした。
こんなアホなことばかりやっていたものだから、
ここから1年以上も定職に就くことはできない新垣であった。
【おまけ】
地下鉄堺筋線・恵比寿町駅でキップを買い、改札口に向かう。
ふいに背後から「あの、すいませーん」という女性の声がした。
振り向くと、そこにはOLふうのお姉さん。鈴木京香に似ている。
女性「落とされましたよ、コレ(半笑い)」
大さん「え?」
手渡されたのは。
めっちゃ恥ずかしいっちゅうねん。
~ Fin ~
illustrations by 嫁