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会社を、永く続けるために

今年3月、アーツはおかげさまで設立30周年を迎えました。そして、この秋、私は代表取締役社長を退き、会長になります。新しい社長は、現在常務を務める長男の黒木太郎です。

私たちは、代表交代について「基本合意書」という文書を取り交わし、役員会で共有しました。その第1条に、この交代の「目的」をこう書きました。代表交代を「会社の永続と成長」、そして「社員と取引先の安心」を第一に、段階的かつ計画的に実行する――と。

なぜわざわざ目的を書いたのか。代表交代というと、つい「誰が次の社長か」に関心が向きます。けれど本当に大事なのは、人ではなく、その先にある「会社が永く続くこと」だと私は考えています。社長交代は手段であって、目的ではありません。アーツには社員がいて、取引先があり、お客様がいます。その全員の安心の上に、会社の永続がある。だから第1条には、私個人の引退の話ではなく、会社の未来を書きました。

「段階的かつ計画的に」という箇所も大切だと考えています。私は、代表交代を一度きりのイベントにはしないつもりです。この秋の交代は、いわば「宣言」です。社長の名札は太郎に渡しますが、私はそこから、会長として伴走しながら時間をかけて経営を手渡していくつもりです。

そして私が一番こだわったのは「何を変えないか」でした。経営のやり方は太郎の代で大きく変わるでしょう。変わるべきです。けれど、変えてはいけないものもあります。アーツが30年かけて育ててきた企業理念――私たちが「クレド」と呼ぶ価値観と、創業以来の社風や文化です。これだけは世代が替わっても受け継いでほしい。その想いも、文書に書き込みました。

代表交代とは、次の世代へバトンを渡し、会社を永く未来へ続けていくこと。私はそう考えています。