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新型コロナウイルスと東日本大震災に学ぶ危機管理

新型コロナウイルスの混乱の中、SNSのデマにより
「トイレットペーパーは中国で生産。品薄になる前に購入しておいた方がよい」
という嘘の話が出回りました。

 

仕事柄、紙に関わることが多いので、
「これは100%ありえない」
生産工場の90%以上が国産。
更に原材料に中国品はほとんどないのに、
全く根拠のない話だ。

と思っておりました。

 

ドラッグストアから一気に品薄になる状況を見ていましたが、
マスクと違って1日の生産量の数からして、直ぐに入手が出来ることは明らかで、
意地でも買うものか。と少し不安がよぎることもありましたが、買わずに過ごして
おりました。

現在は少し入手し辛い状況ではありますが、元の状況に戻りつつあるように思います。

トイレットペーパー・ティッシュペーパーの加工は
90%以上を国内の複数地域の工場で作っています。

では原料はどうなの?という疑問を持つ方もいらっしゃるかも知れません。

紙を作る原料は木材です。
木材チップを煮立てて繊維を取り出しパルプを生成します。
日本製紙連合会経済産業省の資料では
日本は木材チップの70%を輸入し、
パルプは73%が国産で生産している状況です。

 

木材チップ・パルプに中国産があれば、デマの内容も一理あったかも
知れませんが、中国産はありません。
輸入比率の高い木材チップはグラフの通りの国から輸入しています。
リスク分散もあって、複数の国から輸入されています。
広葉樹と針葉樹の使い分けは国によって違いますが、日本は柔らかい紙質を
好むこともあるのか、圧倒的に広葉樹の輸入量が多いです。

このように正しく裏付けされた内容があれば、惑わされることはありません。

 

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そして先週3月11日は東日本大震災から9年目の日でした。

製品を作る為の資材仕入れの環境は、危機管理が必要な状況になっています。
10年に1度の感染病。数年に1度起きる大地震・台風などの自然災害。
発生すると大きな影響が出る場合があります。

影響が出ると資材が入手出来ず、企業は開店休業状態になり、
お客様に製品を届けられなくなってしまいます。これではご迷惑をお掛けしてしまう
ことになります。
その為に、リスクマネジメントと言われる危機管理。大企業であれば、BCP(Business
Continuity Plan)と言われる、サプライチェーンと予め提携を行い、仕入れ商品を
切らさないようにする動きが2011年以降活発に行わるようになっています。

 

危機管理をするために必要なことは幾つかありますが、
一つ挙げるなら担当者が実際に仕入れている物が
「何処の場所で」作られているか。原料は「何か」。
これを把握していないと何かが起きた時に直ぐに行動に移すことが出来ません。

 

東日本大震災の時は、印刷用紙を生産している製紙工場に影響がでました。

日本全体の生産量2割にあたる工場が津波の影響で生産停止になりました。
その間、雑誌が発刊できなかったり、出版物やチラシの紙質が
変わったり大きな影響が出ました。

 

東日本大震災の時の経験上、初動が大事だと思っています。
1日でも遅れをとれば、他社が同じような対策をしてきます。
それでは遅いのです。自然災害発生時、物は通常に入手
出来なくなっていますから、時間が勝負の分かれ目になります。

自然災害が起きてから、いつも使っている資材がどこで作っているのか調べるとしても、
聞く相手も混乱期にいますから情報はなかなか入手出来ません。
最悪は2018年の北海道地震の時のように自社が停電になり、
仕入先のWEBサイトだって見られないかも知れません。

事前に把握をしていないと、大きく差が付いてしまうのです。

サプライチェーンに頼っている時間などありません。自ら決め打ちで依頼を次々と
していかなければ、影響はみるみる大きくなっていきます。初動が自社の1カ月・2ヶ月先の
状況を決めていくことになります。

 

私は東日本大震災の後、日本全国の製紙工場の場所と製造している品目を全て調べました。
それをGoogleMapに記録し把握できるようにしました。電気が使えない場合も想定して
紙にも印刷しています。作成以降、自然災害があれば、直ぐに影響度合いが把握出来るように
なりました。

製紙工場地図

 

製紙工場以外にも他資材のバージョンの日々更新していっています。

 

もし何かが発生した場合の主なフローは次の通りですが、大事な注意点があります。
自然災害時、自分達以外に問い合わせをする相手が被災者だったり、親戚に被災者の方が
いらっしゃるかも知れません。

”最大限相手に配慮をしたうえで”業務を行う必要があります。

 

自然災害が発生→場所を把握する→その場所に自社に影響を及ぼすサプライチェーンは
存在するのか確認→存在した場合、影響がある先方には被災状況を配慮したうえで、
可能な限りコンタクトをとる→入手可能な在庫を仕入れるか、他社の代替品を購入するか
即時に判断して手当する→お客様の希望される商品を切らさない、納期に影響が無いように
対応していく。

日本は自然災害の多い国です。
枕元に避難用具を置くように、仕事でも準備が必要なのです。
確かな情報を持ち、嘘・噂に左右されないこと。

コロナウイルスにしても自然災害にしても、
先が見えなくなった時にこそ
正しい情報は効果を発揮すると思います。

 

 

それと東日本大震災で学んだこと。

例えば、海沿いの地震の時は直ぐに高いところへ行くこと。
そして絶対に戻らないこと。

人は教訓すら忘れてしまいます。

年に1度でも思い出すことが大事だと思います。

正しく後世に伝えなければなりません。

 

生産部門 太田